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2016(平成28)年度 特別会計決算報告書を読む その3 国債整理基金、外国為替資金、財政投融資

引き続き、特別会計の明細を読んでいきます。

国債整理基金財務省所管)

言わずと知れた「国債」を運用するための特別会計、ですね。

歳入: 算額 収納済額 差額
他会計より受入
 他会計より受入 88兆4733億円 85兆1777億円 -3兆2957億円
 東日本大震災復興他会計より受入 4207億円 4174億円 -33億円
租税
 たばこ特別税 1428億円 1414億円 -14億円
公債金
 公債金 109兆2616億円 109兆4798億円 +2183億円
 復興借換公債金 0円 3880億円 +3880億円
資産処分収入
 東日本大震災復興株式売払い収入 1兆4000億円 0円 -1兆4000億円
配当金収入
 東日本大震災復興配当金収入 1136億円 1136億円 0円
運用収入
 運用収入 1951億円 739万円 -1950億円
 東日本大震災復興運用収入 57億円 0円 -57億円
雑収入
 雑収入 471億円 448億円 -23億円
前年度剰余金受入
 前年度剰余金受入 170億円 3兆0807億円 +3兆0637億円
 東日本大震災復興前年度剰余金受入 1000円 5381億円 +5381億円
歳入合計: 200兆0768億円 198兆9935億円 -1兆0833億円

「他会計より繰入」は、財務省の一般会計から22兆円、特別会計交付税及び譲与税配布金」から33兆円、「外国為替基金」から8240億円、「財政投融資特別会計」から20兆円、「原子力損害賠償勘定」から8兆円、「健康勘定」から1.5兆円、などとなっています。
他会計からの受入は、ほとんどの項目で減額となっています。それぞれの項目について「一時借入金利子の支払財源の受入が少なかった等のため」といった理由が書かれています。

歳出: 歳出予算 前年度繰越 支出済額 翌年度繰越 不用額
国債整理支出 198兆1369億円 3兆0637億円 194兆4541億円 3兆0711億円 3兆6754億円
復興債整理支出 9529億円 5381億円 1兆4571億円 0円 339億円
歳出合計 199兆0898億円 3兆6018億円 195兆9111億円 3兆0711億円 3兆7093億円

国債整理支出」で不用額を生じたのは「政府短期証券償還及び借入金償還の支払が予定を下回ったこと等により」となっています。
「復興債整理支出」の不用額については、「株式の売払いがなかったので、株式売払手数料を要しなかったこと等のため」と書かれています。「株式売払手数料」として計上されている227億円が、手付かずのまま不用額として計上されています。

「収納済額」から「支出済額」を引いた「剰余金」は3兆0824億円、これは翌年度の歳入に繰り入れることになっています。

最後に、「国債整理基金の年度末残高表」が付いています。「償還財源繰入額等」が総額75兆1658億円、「償還額」が75兆7029億円、年度末基金残高は、前年度より5371億円減少の3兆0062億円、となっています。
年度末時点での「国際借家額」は、109兆4798億円、と記されています。

外国為替資金(財務省所管)

歳入: 算額 収納済額 差額
外国為替等売買差益 1500億円 2084億円 +584億円
運用収入 2兆4873億円 2兆1877億円 -2996億円
雑収入 7億円 2351億円 +2344億円
前年度剰余金受入 0円 3169億円 +3169億円
歳入合計: 2兆6138億円 2兆9481億円 +3169億円

「運用収入」のマイナスは、「外貨証券の運用益が予定より少なかったこと等のため」と書かれています。
「雑収入」のプラスは、「外国為替資金証券の発行において、発行高を超過する収入金があったこと等のため」とされています。

歳出: 歳出予算 流用増減 支出済額 不用額
事務取扱費 17億円 13億円 4億円
諸支出金 650億円 +39億円 685億円 3億円
うち償還差額補填金 543億円 +77億円 620億円 886円
うち払戻金 4000万円 +48億円 48億円 10万円
融通証券事務取扱費一般会計へ繰入 95万円 95万円 0円
国債整理基金特別会計へ繰入 8240億円 -39億円 4億円 8197億円
予備費 3000億円 0円 3000億円
歳出合計 1兆1907億円 703億円 1兆1204億円

…えらく出入りにばらつきがある会計になっていますが、外国為替レートに左右されるので、これはしょうがないのでしょうか。
「諸支出金」のうち、「償還差額補填金」という項目で、「外国為替資金の運用に伴い、外貨証券の償還差額を補填するため」という理由で、「国債整理基金への繰入」から38億円流用されています。残りの39億円は「諸支出金」の中で予算の移し替えで対応しています。
「諸支出金」の中の「払戻金」も他の項目から予算が移行されていますが、理由が「過誤納による払戻金の支払が多かったため」とあります。これも気になります。
それにしても「国債整理基金特別会計へ繰入」が予算8000億円に対して支出済み4億円、になっています。これは「外国為替資金証券利子の支払がなかったこと、融通証券起債に係る手数料の支払が予定を下回ったこと等のため」となっています。しかし8000億円もの不用額が出てしまうのは、どうも疑問に思えます。
「融通証券事務取扱費一般会計へ繰入」という項目ですが、一般会計で検索しても、この項目はありませんでした。どこへ行ったんでしょう? おそらく、所管する財務省でしょうが。

「収納済額」から「支出済額」を引いた「剰余金」は2兆8779億円。この剰余金は規定により、2兆5188億円を翌年度の一般会計へ、3591億円を翌年度の歳入に繰り入れる、と記されています。

歳入・歳出の後に損益計算書貸借対照表、があり、最後に「外国為替資金増減実績表」が付与されています。昨年度末現在地が149兆円、歳入外受入が275兆円、歳出外払出が278兆円、本年度末現在額は、145兆3986億円、となっています。


財政投融資財務省国土交通省所管)

財政投融資」については、財務省に以下のような説明が示されています。

>> 「財政投融資とは、税負担に拠ることなく、国債の一種である財投債の発行などにより調達した資金を財源として、政策的な必要性があるものの、民間では対応が困難な長期・低利の資金供給や大規模・超長期プロジェクトの実施を可能とするための投融資活動です。」

財政投融資特別会計」は、「財政融資資金勘定」「投資勘定」「特定国有財産整備勘定」に分かれて決算書が作成されています。

財政投融資–財政融資資金勘定

歳入: 算額 収納済額 差額
資金運用収入–運用利殖金収入 1兆5734億円 1兆4455億円 -1279億円
公債金 19兆6000億円 19兆6000億円 -13万円
財政融資資金より受入 19兆4823億円 19兆4823億円 +116円
雑収入 381億円 77億円 -304億円
歳入合計: 40兆6939億円 40兆5355億円 -1583億円

「資金運用収入」のマイナスは、「貸付金の利率を改定したこと等のため」とのことです。
「雑収入」のマイナスは、預金利子収入や金利スワップ取引による利子収入が少なかった等、とされています。

歳出: 算額 支出済額 不用額
財政融資資金へ繰入 19兆6000億円 19兆6000億円 13万円
事務取扱費 59億円 56億円 3億円
諸支出金 3877億円 2441億円 1436億円
公債等事務取扱費一般会計へ繰入 7110万円 6045万円 1065万円
国債整理基金特別会計へ繰入 20兆4852億円 20兆3839億円 1013億円
予備費 6000万円 0円 6000万円
歳出合計 40兆4789億円 40兆2337億円 2452億円

「公債金収入」の20兆円と「財政融資資金へ繰入」はまったく同額になっています。「財政融資資金から受入」、「財政融資資金へ繰入」というのは、他の会計のような「前年度からの繰越」「翌年度への繰越」とは違う扱いになっている、ということなのでしょうか。

「収納済額」から「支出済額」を引いた「剰余金」3019億円は、積立金として積み立てることとする、と記されています。
また、この勘定の損益計算上の利益は3146億円あり、これは翌年度に繰り越して整理する、となっています。
ちなみに財政融資勘定の積立金明細が記されており、それによると、年度末の積立金は5925億円、となっています。

財政投融資–投資勘定

歳入: 算額 収納済額 差額
運用収入 3577億円 4254億円 +676億円
うち償還金収入 1.05億円 1.05億円 0円
うち利子収入 8885万円 1376万円 +4892万円
うち納付金 2212億円 2213億円 +1.5億円
うち配当金収入 1364億円 2020億円 +656億円
うち出資回収金収入 0円 18.50億円 +18.50億円
一般会計より受入 2590億円 2590億円 0円
資産処分収入 2672億円 2672億円 0円
雑収入 546万円 3万円 -543万円
前年度剰余金受入 2857億円 5036億円 +2179億円
歳入合計 1兆1696億円 1兆4552億円 +2855億円

「運用収入」の中で大きな「配当金収入」は、「日本たばこ産業」「日本電信電話(NTT)」「日本政策投資銀行」「商工組合中央金庫」からの配当金収入で「1株あたりの配当金が予定より多かったため」となっています。
「一般会計より受入」は、財務省からの2590億円です。「雑収入」のマイナスは、「国有地の売払いがなかったため」とのことです。

歳出: 算額 前年度繰越 支出済額 翌年度繰越 不用額
産業投資支出 5667億円 2億円 2780億円 2026億円 863億円
事務取扱費 1.23億円 9111万円 3145万円
一般会計へ繰入 1244億円 1244億円 0円
地方公共団体金融機構納付金収入
交付税及び譲与税配布金特別会計へ繰入 2000億円 2000億円 0円
国債整理基金特別会計へ繰入 13万円 0円 13万円
東日本大震災復興
国債整理基金特別会計へ繰入 2783億円 2783億円 0円
予備費 1億円 0円 1億円
歳出合計 1兆1696億円 2億円 8808億円 2026億円 865億円

「産業投資支出」が少なくなっているのは、「株式会社海外交通・都市開発事業支援機構出資金、株式会社海外通信・放送・郵便事業支援機構出資金」が予定を下回ったため等、とのことです。というか、こんな会社があったのか、とちょっと驚いたり、そこにそれなりの投資支出が行われているということも、知られてないことではないか、と思います。ちなみにこの2つの会社は、「一般会計」の明細には出てきません。
他への出資金もあるのかも知れませんが、この会計による投資先にどのようなところがあるのか、知りたくなってきます。
「事務取扱費」には、人件費も含まれています。
「一般会計へ繰入」について、一般会計決算を見てみると、財務省の収入として「財政投融資特別会計受入金」として1245億円が計上されています。これはこの会計の1244億円と、上の「財政融資資金」の中の「一般会計繰入」の6045万円を足した金額になっています。

「収納済額」から「支出済額」を引いた「剰余金」5743億円のうち、法律の規定により10万円を一般会計に繰り入れ(少ない)、残りを翌年度の歳入に繰り入れる、とあります。
また、この勘定の損益計算上における利益は4761億円あり、この利益は「利益積立金」に組み入れる、と記されています。

財政投融資–特定国有財産整備勘定

歳入: 算額 収納済額 差額
国有財産売払収入 619億円 1000億円 +380億円
雑収入 1.33億円 5.52億円 4.19億円
前年度剰余金受入 52億円 325億円 +273億円
歳入合計 673億円 1330億円 +657億円

「国有財産売払収入」のプラスは、「売払単価が予定を上回ったため」と書かれています。
「前年度剰余金受入」のプラスは、「前年度の売払収入が予定より多かったこと等のため」だそうです。

歳出: 算額 前年度繰越 支出済額 翌年度繰越 不用額
特定国有財産整備費 590億円 127億円 506億円 204億円 7億円
事務取扱費 18.29億円 9120万円 9.98億円 0円 9.22億円
国債整理基金特別会計へ繰入 1億円 990万円 9010万円
予備費 1000万円 0円 1000万円
歳出合計 609億円 128億円 516億円 204億円 17億円

「整備費」の不用額は「事業内容の見直し、契約価格が予定を下回ったこと」などのため、となっています。また、この勘定の「事務取扱費」には、職員基本給や手当などの人件費は入っていません。「財政融資資金勘定」と「投資勘定」には、それぞれ人件費が計上されているのですが。
国債整理基金特別会計への繰入」が、支出済額が予算の1割に留まっているのは、「借入金利子の支払が予定を下回ったため」となっています。

「収納済額」から「支出済額」を引いた「剰余金」は814億円、これは翌年度の歳入に繰り入れることになっています。


ちなみに、「財政融資資金勘定」と「投資勘定」については、損益計算書貸借対照表が掲載されているのですが、この「特定国有財産整備勘定」についてはどちらも掲載されていません。他の2つの勘定とは、性格の違う会計になっているのかも知れません。

「財政融資資金」には「増減実績表」というのが掲載されています。
前年度末現在額は133兆5187億円、受入合計が4195億円、払出合計が3兆8711億円、本年度末現在額は、130兆0672億円、となっています。

さらに、「財施融資資金勘定」には「運用資産明細表」が掲載されていて、有価証券、貸付金(国家会計、政府機関、地方公共団体独立行政法人、国立研究開発法人などへの)の明細が一覧表になっています。