ちょっと時間が開きました。だんだん会計の内容が面倒くさくなってきたので。気を取り直しつつ。その前に「その1」の中の、一般会計から「労働保険特別会計」への繰入総額に誤りがありましたので、訂正しています。総額は1280億円ではなく、1384億円です。単なる計算違いです。
労働保険特別会計(厚生労働省所管)
労働保険特別会計は、失業保険、労働者災害補償保険、雇用保険などの経理を明確にするために設置されたもので、労災保険事業を経理する「労災勘定」、雇用保険事業を経理する「雇用勘定」、そして労働保険料の徴収に係る業務を経理する「徴収勘定」に三つの勘定に区分されています。
労働保険–労災勘定
歳入: | 予算額 | 収納済額 | 差額 |
---|---|---|---|
保険収入 | 1兆0684億円 | 1兆0684億円 | +532円 |
うち徴収勘定より受入 | 8723億円 | 8723億円 | 0円 |
うち一般会計より受入 | 1.92億円 | 1.92億円 | 0円 |
うち未経過保険料受入 | 223億円 | 223億円 | +532円 |
うち支払備金受入 | 1736億円 | 1736億円 | 0円 |
運用収入 | 1319億円 | 1305億円 | -14億円 |
独立行政法人納付金 | 2.23億円 | 2.23億円 | +50円 |
雑収入 | 189億円 | 224億円 | +35億円 |
前年度繰越資金受入 | 0円 | 22億円 | +22億円 |
歳入合計: | 1兆2194億円 | 1兆2237億円 | +281億円 |
「一般会計より受入」は、厚生労働省からの「労働者災害補償保険保険給付費 労働保険特別会計へ繰入」に当たるようです。
「運用収入」のマイナスは、「預託金の運用利回りが予定を下回ったこと等のため」となっています。
「雑収入」のプラスは、17億円が「未払賃金立替払事業費補助金の返納金があったこと等のため」、18億円が「労働者災害補償保険法(昭和 22 年法律第 50 号)第 12 条の 4 の規定による損害賠償金が予定より多かったこと等のため」となっています。
「前年度繰越資金受入」が予算計上されていませんが、これには「前年度において独立行政法人労働者健康福祉機構施設整備費の繰越しがあったこと等のため」となっています。
「労働車健康福祉機構」って? と思ってググってみると、これは「労働者健康安全機構」の全身組織のようで、「労働者健康安全機構」のホームページに「 平成28年4月より、独立行政法人 労働者健康福祉機構と独立行政法人労働安全衛生総合研究所が統合し、「独立行政法人労働者健康安全機構」として発足」との記述があります。
歳出: | 予算額 | 前年度繰越 | 支出済額 | 翌年度繰越 | 不用額 |
---|---|---|---|---|---|
労働安全衛生対策費 | 186億円 | 167億円 | 1960万円 | 18億円 | |
保険給付費 | 7679億円 | 7357億円 | 322億円 | ||
職務上年金給付費年金特別会計へ繰入 | 84億円 | 84億円 | 837万円 | ||
職務上年金給付費等交付金 | 58億円 | 58億円 | 0円 | ||
社会復帰促進等事業費 | 1396億円 | 3944万円 | 1213億円 | 13億円 | 171億円 |
(独)労働者健康安全機構運営費交付金 | 99億円 | 99億円 | 0円 | ||
(独)労働者健康安全機構施設整備費 | 28億円 | 17億円 | 40億円 | 4億円 | 5757万円 |
仕事生活調和推進費 | 26億円 | 445万円 | 12億円 | 0円 | 14億円 |
中小企業退職金共済等事業費 | 19億円 | 19億円 | 31万円 | ||
(独)労働政策研究・研修機構労災勘定運営費交付金 | 1億円 | 1億円 | 0円 | ||
(独)労働政策研究・研修機構施設整備費 | 5481万円 | 4347万円 | 1134万円 | ||
個別労働紛争対策費 | 11億円 | 10億円 | 1億円 | ||
業務取扱費 | 536億円 | 492億円 | 1611万円 | 43億円 | |
施設整備費 | 13億円 | 5.2億円 | 10億円 | 6.9億円 | 1.7億円 |
保険料返還金等徴収勘定へ繰入 | 377億円 | 371億円 | 5.7億円 | ||
予備費 | 67億円 | 0円 | 67億円 | ||
歳出合計: | 1兆0580億円 | 22億円 | 1兆0602億円 | 9934億円 | 644億円 |
「労働安全衛生対策費」には、事務費(旅費・庁費など)などの他に、「労働災害防止対策事業委託費」「産業医学助成費補助金」「産業保健活動総合支援事業費補助金」などが含まれています。あと「受動喫煙防止対策助成金」というものも。
「社会復帰促進等事業費」の中には、「労災援護給付金(支出済:959億円)」が最大の支出となっています。この中に「未払賃金立替払事業費補助金」があります。
「仕事生活調和推進費」には、「労働時間等設定改善推進助成金」というのが含まれています。これはどんな事業をしているのか、少し気になります。
「独立行政法人 労働政策研究・研修機構 (JILPT)」にはホームページがあります。
「業務取扱費」には人件費、庁費が含まれています。
「収納済額」から「支出済額」を引いた「剰余金」は323億円。これは積立金として積み立てることとする、とあります。
労働保険–雇用勘定
歳入: | 予算額 | 収納済額 | 差額 |
---|---|---|---|
保険収入 | 2兆0446億円 | 2兆0199億円 | -247億円 |
うち徴収勘定より受入 | 1兆8922億円 | 1兆8922億円 | 0円 |
うち一般会計より受入 | 1524億円 | 1277億円 | -247億円 |
積立金より受入 | 4058億円 | 1700億円 | -2358億円 |
運用収入 | 6.1億円 | 7.0億円 | +8939万円 |
独立行政法人納付金 | 917万円 | 643万円 | -273万円 |
雑収入 | 188億円 | 233億円 | +45億円 |
前年度繰越資金受入 | 0円 | 37億円 | +37億円 |
歳入合計: | 2兆4697億円 | 2兆2175億円 | -2522億円 |
「一般会計より受入」は、厚生労働省の「失業等給付費等」と「就職支援法事業費」からの繰入で、総額1277億円になるようです。マイナスになったのは「失業給付金・育児休業給付金・職業訓練受講給付金・認定職業訓練実施奨励金」を要することが少なかったため、との説明があります。これは一般会計決算にも書かれており、「決算額を調整して減額した」と書かれてあります。
「積立金より受入」のマイナスも、「失業給付金を要することが少なかったこと等のため」とあります。
歳出 | 予算額 | 前年度繰越 | 流用増減 | 支出済額 | 翌年度繰越 | 不用額 |
---|---|---|---|---|---|---|
中小企業雇用安定事業等補助金 | 62億円 | 62億円 | 16万円 | |||
(独)勤労者退職金共済機構運営費 | 3238万円 | 3238万円 | 0円 | |||
労使関係安定形成促進費 | 4.1億円 | 3.9億円 | 1896万円 | |||
個別労働紛争対策費 | 11億絵円 | 10億円 | 9660万円 | |||
職業紹介事業等実施費 | 574億円 | 527億円 | 46億円 | |||
地域雇用機会創出等対策費 | 978億円 | 786億円 | 1485万円 | 193億円 | ||
高齢者等雇用安定・促進費 | 1731億円 | -174億円 | 1444億円 | 113億円 | ||
失業等給付費 | 1兆7211億円 | 1兆4838億円 | 2374億円 | |||
就職支援法事業費 | 251億円 | 2.6億円 | 182億円 | 72億円 | ||
職業能力開発強化費 | 549億円 | 2124万円 | 498億円 | 2.2億円 | 49億円 | |
若年者等職業能力開発支援費 | 33億円 | 26億円 | 6.9億円 | |||
(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構運営費 | 672億円 | 672億円 | 0円 | |||
(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構施設整備費 | 20億円 | 2454万円 | 16億円 | 1.4億円 | 3.7億円 | |
障害者職業能力開発支援費 | 17億円 | 16億円 | 1.3億円 | |||
技能継承・振興推進費 | 41億円 | 41億円 | 3313万円 | |||
男女均等雇用対策費 | 118億円 | +174億円 | 271億円 | 21億円 | ||
(独)労働政策研究・研修機構運営費交付金 | 19億円 | 19億円 | 0円 | |||
(独)労働政策研究・研修機構施設整備費 | 1.4億円 | 1.3億円 | 612万円 | |||
業務取扱費 | 948億円 | 9.8億円 | 910億円 | 48億円 | ||
施設整備費 | 34億円 | 2.8億円 | 23億円 | 12億円 | 1.9億円 | |
雇用安定資金へ繰入 | 528億円 | 528億円 | 0円 | |||
保険料返還金等徴収勘定へ繰入 | 284億円 | 271億円 | 13億円 | |||
予備費 | 610億円 | 0円 | 61億円 | |||
歳出合計: | 2兆4697億円 | 16億円 | 2兆1144億円 | 16億円 | 3554億円 |
「職業紹介事業等実施費」の不用額は「業務内容の見直しによる業務計画の変更をしたこと及び契約価格が予定を下回ったことにより」との説明があります。
「地域雇用機会創出等対策費」の不用額は「キャリア形成促進助成金の支給人員及び 1 人当たり支給額が予定を下回ったこと等により」との説明があります。
「高齢者等雇用安定・促進費」の不用額は「特定求職者雇用開発助成金及びトライアル雇用奨励金の支給件数が予定を下回ったこと等により」との説明があります。
「失業等給付費」の不用額は「一般求職者給付及び高年齢求職者給付が予定を下回ったこと等により」とあります。
「就職支援法事業費」の不用額は「支給人が予定を下回ったこと等により、認定職業訓練実施奨励金を要することが少なかったこと等のため」とあります。
「職業能力開発強化費」の不用額は「総合的職業能力開発プログラム推進事業及び雇用型訓練等の推進事業が予定を下回ったこと等により、生涯職業能力開発事業等委託費を要することが少なかったこと等のため」とあります。
「若年者等職業能力開発支援費」の不用額は「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律(平成 28 年法律第 89 号)の施行が遅れたので、外国人技能実習機構交付金を要することが少なかったこと等のため」とあります。
「キャリア形成促進助成金」「特定求職者雇用開発助成金」「トライアル雇用奨励金」「認定職業訓練実施奨励金」などなど、様々な助成金、奨励金がありますが、これらの「支給人が予定を下回ったのは、どういう経緯があってのことか」についての説明を知りたいと思いますが。どこかで公表されているのでしょうか。
「若年者等職業能力開発支援費」の中の項目で、「外国人技能実習機構交付金」は7.4億円の予算が計上されていますが、支出済額は3.2億円に留まっています。
「男女均等雇用対策費」は計上された予算を大きく上回って支出されています。これは「介護支援取組助成金の支給件数が増加したため」とあり、「高齢者等雇用安定・促進費」から移用されています。「不用額を生じたのは、介護支援取組助成金の支給件数が予定を下回ったこと、介護離職 防止支援助成金を要しなかったこと等により、雇用安定等給付金を要することが少なかったこと等のため」となっています。
「業務取扱費」には人件費が含まれている他に、「一般会計へ繰入」として6257万円が支出されています。これは一般会計のどの項目に繰り入れられているのかは、ちょっとわかりません。厚生労働省の歳入歳出決算の中に「失業者退職手当特別会計等負担金(収納済額:834万円)」、「労働保険審査会費特別会計負担金(収納済額:2.86億円)」がありますが、金額が合いません。
「収納済額」から「支出済額」を引いた「剰余金」は1032億円となっています。このうち、「雇用安定事業、能力開発事業及び法律に規定された暫定雇用福祉事業以外」の収納済額から支出済額・繰越額を引いた506億円は積立金とは積み立てる、とします。
「雇用安定事業、能力開発事業及び法律に規定された暫定雇用福祉事業」収納済額から支出済額・繰越額を引いた464億円は、規定によって雇用安定資金に組み入れる、としています。
これ、2つを足すと970億円となって、剰余金の金額と異なりますが、その差額についての説明はありません。翌年度の歳入に繰り入れる事になっているのでしょうか。
独立行政法人のホームページはこちらになります。これ、一般会計の時もやっとけばよかったかも、と思ってしまいますが。
ホームページ:
「独立行政法人 勤労者退職金共済機構」
「独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構」
労働保険–徴収勘定
歳入: | 予算額 | 収納済額 | 差額 |
---|---|---|---|
保険収入 | 2兆7436億円 | 2兆7561億円 | +125億円 |
一般会計より繰入 | 9266万円 | 9266万円 | 0円 |
一般拠出金収入 | 36億円 | 37億円 | +2871万円 |
労災勘定より受入 | 377億円 | 371億円 | -18億円 |
雇用勘定より受入 | 284億円 | 271億円 | -13億円 |
雑収入 | 9.6億円 | 17億円 | +7.7億円 |
前年度剰余金受入 | 244億円 | 290億円 | +46億円 |
歳入合計 | 2兆8388億円 | 2兆8548億円 | +161億円 |
「一般会計より受入」の9266万円は、環境省からの「石綿健康被害救済事務費」というものに当たるのか、と思われます。
「労災勘定」「雇用勘定」からの受入がマイナスになっているのは、「業務取扱費を要することが予定より少なかったこと等のため」と説明されています。
「雑収入」のプラスは、主に延滞金で、「雇用保険料に係る延滞金が予定より多かったこと等のため」だそうです。
歳出 | 予算額 | 前年度繰越 | 支出済額 | 翌年度繰越 | 不用額 |
---|---|---|---|---|---|
業務取扱費 | 343億円 | 312億円 | 31億円 | ||
保険給付費等財源労災勘定へ繰入 | 8723億円 | 8723億円 | 0円 | ||
失業等給付費等財源雇用勘定へ繰入 | 1兆8922億円 | 1兆8922億円 | 0円 | ||
諸支出金 | 399億円 | 373億円 | 26億円 | ||
予備費 | 1億円 | 0円 | 1億円 | ||
歳出合計: | 2兆8388億円 | 2兆8330億円 | 58億円 |
「事務取扱費」には人件費も含まれています。ここからも「一般会計へ繰入」41万円が支出済みとなっています。
「諸支出金」には、「賠償償還及払戻金」「保険料返還金」が含まれています。不用額を生じたのは「雇用保険料及び労災保険料に係る精算返還金が予定を下回ったことにより」となっています。
「収納済額」から「支出済額」を引いた「剰余金」は218億円となります。これは翌年度の歳入に繰り入れられます。
「労災保険特別会計」には、それぞれの勘定ごとに損益計算書と貸借対照表が添付されています。
さらに「労災勘定」「雇用勘定」には積立金があり、「雇用勘定」には「雇用安定資金」があります。
「労災勘定積立金」は2016年度末で、7兆8616億円。
「雇用勘定積立金」は2016年度末で、6兆2560億円となっています。
「雇用安定資金」は前年度末9403億円、雇用勘定から528億円、前年度剰余金から1180億円を受け入れ、年度末現在額は1兆1112億円となっています。