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2016(平成28)年度 特別会計決算報告書を読む その5 労働保険

ちょっと時間が開きました。だんだん会計の内容が面倒くさくなってきたので。気を取り直しつつ。その前に「その1」の中の、一般会計から「労働保険特別会計」への繰入総額に誤りがありましたので、訂正しています。総額は1280億円ではなく、1384億円です。単なる計算違いです。

労働保険特別会計厚生労働省所管)


労働保険特別会計は、失業保険、労働者災害補償保険雇用保険などの経理を明確にするために設置されたもので、労災保険事業を経理する「労災勘定」、雇用保険事業を経理する「雇用勘定」、そして労働保険料の徴収に係る業務を経理する「徴収勘定」に三つの勘定に区分されています。

労働保険–労災勘定

歳入: 算額 収納済額 差額
保険収入 1兆0684億円 1兆0684億円 +532円
うち徴収勘定より受入 8723億円 8723億円 0円
うち一般会計より受入 1.92億円 1.92億円 0円
うち未経過保険料受入 223億円 223億円 +532円
うち支払備金受入 1736億円 1736億円 0円
運用収入 1319億円 1305億円 -14億円
独立行政法人納付金 2.23億円 2.23億円 +50円
雑収入 189億円 224億円 +35億円
前年度繰越資金受入 0円 22億円 +22億円
歳入合計: 1兆2194億円 1兆2237億円 +281億円


「一般会計より受入」は、厚生労働省からの「労働者災害補償保険保険給付費 労働保険特別会計へ繰入」に当たるようです。
「運用収入」のマイナスは、「預託金の運用利回りが予定を下回ったこと等のため」となっています。
「雑収入」のプラスは、17億円が「未払賃金立替払事業費補助金の返納金があったこと等のため」、18億円が「労働者災害補償保険法(昭和 22 年法律第 50 号)第 12 条の 4 の規定による損害賠償金が予定より多かったこと等のため」となっています。
「前年度繰越資金受入」が予算計上されていませんが、これには「前年度において独立行政法人労働者健康福祉機構施設整備費の繰越しがあったこと等のため」となっています。
「労働車健康福祉機構」って? と思ってググってみると、これは「労働者健康安全機構」の全身組織のようで、「労働者健康安全機構」のホームページに「 平成28年4月より、独立行政法人 労働者健康福祉機構独立行政法人労働安全衛生総合研究所が統合し、「独立行政法人労働者健康安全機構」として発足」との記述があります。

歳出: 算額 前年度繰越 支出済額 翌年度繰越 不用額
労働安全衛生対策費 186億円 167億円 1960万円 18億円
保険給付費 7679億円 7357億円 322億円
職務上年金給付費年金特別会計へ繰入 84億円 84億円 837万円
職務上年金給付費等交付金 58億円 58億円 0円
社会復帰促進等事業費 1396億円 3944万円 1213億円 13億円 171億円
(独)労働者健康安全機構運営費交付金 99億円 99億円 0円
(独)労働者健康安全機構施設整備費 28億円 17億円 40億円 4億円 5757万円
仕事生活調和推進費 26億円 445万円 12億円 0円 14億円
中小企業退職金共済等事業費 19億円 19億円 31万円
(独)労働政策研究・研修機構労災勘定運営費交付金 1億円 1億円 0円
(独)労働政策研究・研修機構施設整備費 5481万円 4347万円 1134万円
個別労働紛争対策費 11億円 10億円 1億円
業務取扱費 536億円 492億円 1611万円 43億円
施設整備費 13億円 5.2億円 10億円 6.9億円 1.7億円
保険料返還金等徴収勘定へ繰入 377億円 371億円 5.7億円
予備費 67億円 0円 67億円
歳出合計: 1兆0580億円 22億円 1兆0602億円 9934億円 644億円


「労働安全衛生対策費」には、事務費(旅費・庁費など)などの他に、「労働災害防止対策事業委託費」「産業医学助成費補助金」「産業保健活動総合支援事業費補助金」などが含まれています。あと「受動喫煙防止対策助成金」というものも。
「社会復帰促進等事業費」の中には、「労災援護給付金(支出済:959億円)」が最大の支出となっています。この中に「未払賃金立替払事業費補助金」があります。
「仕事生活調和推進費」には、「労働時間等設定改善推進助成金」というのが含まれています。これはどんな事業をしているのか、少し気になります。
独立行政法人 労働政策研究・研修機構 (JILPT)」にはホームページがあります。
「業務取扱費」には人件費、庁費が含まれています。
「収納済額」から「支出済額」を引いた「剰余金」は323億円。これは積立金として積み立てることとする、とあります。

労働保険–雇用勘定

歳入: 算額 収納済額 差額
保険収入 2兆0446億円 2兆0199億円 -247億円
うち徴収勘定より受入 1兆8922億円 1兆8922億円 0円
うち一般会計より受入 1524億円 1277億円 -247億円
積立金より受入 4058億円 1700億円 -2358億円
運用収入 6.1億円 7.0億円 +8939万円
独立行政法人納付金 917万円 643万円 -273万円
雑収入 188億円 233億円 +45億円
前年度繰越資金受入 0円 37億円 +37億円
歳入合計: 2兆4697億円 2兆2175億円 -2522億円


「一般会計より受入」は、厚生労働省の「失業等給付費等」と「就職支援法事業費」からの繰入で、総額1277億円になるようです。マイナスになったのは「失業給付金・育児休業給付金・職業訓練受講給付金・認定職業訓練実施奨励金」を要することが少なかったため、との説明があります。これは一般会計決算にも書かれており、「決算額を調整して減額した」と書かれてあります。
「積立金より受入」のマイナスも、「失業給付金を要することが少なかったこと等のため」とあります。

歳出 算額 前年度繰越 流用増減 支出済額 翌年度繰越 不用額
中小企業雇用安定事業等補助金 62億円 62億円 16万円
(独)勤労者退職金共済機構運営費 3238万円 3238万円 0円
労使関係安定形成促進費 4.1億円 3.9億円 1896万円
個別労働紛争対策費 11億絵円 10億円 9660万円
職業紹介事業等実施費 574億円 527億円 46億円
地域雇用機会創出等対策費 978億円 786億円 1485万円 193億円
高齢者等雇用安定・促進費 1731億円 -174億円 1444億円 113億円
失業等給付費 1兆7211億円 1兆4838億円 2374億円
就職支援法事業費 251億円 2.6億円 182億円 72億円
職業能力開発強化費 549億円 2124万円 498億円 2.2億円 49億円
若年者等職業能力開発支援費 33億円 26億円 6.9億円
(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構運営費 672億円 672億円 0円
(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構施設整備費 20億円 2454万円 16億円 1.4億円 3.7億円
障害者職業能力開発支援費 17億円 16億円 1.3億円
技能継承・振興推進費 41億円 41億円 3313万円
男女均等雇用対策費 118億円 +174億円 271億円 21億円
(独)労働政策研究・研修機構運営費交付金 19億円 19億円 0円
(独)労働政策研究・研修機構施設整備費 1.4億円 1.3億円 612万円
業務取扱費 948億円 9.8億円 910億円 48億円
施設整備費 34億円 2.8億円 23億円 12億円 1.9億円
雇用安定資金へ繰入 528億円 528億円 0円
保険料返還金等徴収勘定へ繰入 284億円 271億円 13億円
予備費 610億円 0円 61億円
歳出合計: 2兆4697億円 16億円 2兆1144億円 16億円 3554億円


「職業紹介事業等実施費」の不用額は「業務内容の見直しによる業務計画の変更をしたこと及び契約価格が予定を下回ったことにより」との説明があります。
「地域雇用機会創出等対策費」の不用額は「キャリア形成促進助成金の支給人員及び 1 人当たり支給額が予定を下回ったこと等により」との説明があります。
「高齢者等雇用安定・促進費」の不用額は「特定求職者雇用開発助成金及びトライアル雇用奨励金の支給件数が予定を下回ったこと等により」との説明があります。
「失業等給付費」の不用額は「一般求職者給付及び高年齢求職者給付が予定を下回ったこと等により」とあります。
「就職支援法事業費」の不用額は「支給人が予定を下回ったこと等により、認定職業訓練実施奨励金を要することが少なかったこと等のため」とあります。
「職業能力開発強化費」の不用額は「総合的職業能力開発プログラム推進事業及び雇用型訓練等の推進事業が予定を下回ったこと等により、生涯職業能力開発事業等委託費を要することが少なかったこと等のため」とあります。


「若年者等職業能力開発支援費」の不用額は「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律(平成 28 年法律第 89 号)の施行が遅れたので、外国人技能実習機構交付金を要することが少なかったこと等のため」とあります。
「キャリア形成促進助成金」「特定求職者雇用開発助成金」「トライアル雇用奨励金」「認定職業訓練実施奨励金」などなど、様々な助成金、奨励金がありますが、これらの「支給人が予定を下回ったのは、どういう経緯があってのことか」についての説明を知りたいと思いますが。どこかで公表されているのでしょうか。
「若年者等職業能力開発支援費」の中の項目で、「外国人技能実習機構交付金」は7.4億円の予算が計上されていますが、支出済額は3.2億円に留まっています。

「男女均等雇用対策費」は計上された予算を大きく上回って支出されています。これは「介護支援取組助成金の支給件数が増加したため」とあり、「高齢者等雇用安定・促進費」から移用されています。「不用額を生じたのは、介護支援取組助成金の支給件数が予定を下回ったこと、介護離職 防止支援助成金を要しなかったこと等により、雇用安定等給付金を要することが少なかったこと等のため」となっています。


「業務取扱費」には人件費が含まれている他に、「一般会計へ繰入」として6257万円が支出されています。これは一般会計のどの項目に繰り入れられているのかは、ちょっとわかりません。厚生労働省の歳入歳出決算の中に「失業者退職手当特別会計等負担金(収納済額:834万円)」、「労働保険審査会費特別会計負担金(収納済額:2.86億円)」がありますが、金額が合いません。


「収納済額」から「支出済額」を引いた「剰余金」は1032億円となっています。このうち、「雇用安定事業、能力開発事業及び法律に規定された暫定雇用福祉事業以外」の収納済額から支出済額・繰越額を引いた506億円は積立金とは積み立てる、とします。
「雇用安定事業、能力開発事業及び法律に規定された暫定雇用福祉事業」収納済額から支出済額・繰越額を引いた464億円は、規定によって雇用安定資金に組み入れる、としています。
これ、2つを足すと970億円となって、剰余金の金額と異なりますが、その差額についての説明はありません。翌年度の歳入に繰り入れる事になっているのでしょうか。


独立行政法人のホームページはこちらになります。これ、一般会計の時もやっとけばよかったかも、と思ってしまいますが。
ホームページ:
独立行政法人 勤労者退職金共済機構
独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構

労働保険–徴収勘定

歳入: 算額 収納済額 差額
保険収入 2兆7436億円 2兆7561億円 +125億円
一般会計より繰入 9266万円 9266万円 0円
一般拠出金収入 36億円 37億円 +2871万円
労災勘定より受入 377億円 371億円 -18億円
雇用勘定より受入 284億円 271億円 -13億円
雑収入 9.6億円 17億円 +7.7億円
前年度剰余金受入 244億円 290億円 +46億円
歳入合計 2兆8388億円 2兆8548億円 +161億円


「一般会計より受入」の9266万円は、環境省からの「石綿健康被害救済事務費」というものに当たるのか、と思われます。
「労災勘定」「雇用勘定」からの受入がマイナスになっているのは、「業務取扱費を要することが予定より少なかったこと等のため」と説明されています。
「雑収入」のプラスは、主に延滞金で、「雇用保険料に係る延滞金が予定より多かったこと等のため」だそうです。

歳出 算額 前年度繰越 支出済額 翌年度繰越 不用額
業務取扱費 343億円 312億円 31億円
保険給付費等財源労災勘定へ繰入 8723億円 8723億円 0円
失業等給付費等財源雇用勘定へ繰入 1兆8922億円 1兆8922億円 0円
諸支出金 399億円 373億円 26億円
予備費 1億円 0円 1億円
歳出合計: 2兆8388億円 2兆8330億円 58億円


「事務取扱費」には人件費も含まれています。ここからも「一般会計へ繰入」41万円が支出済みとなっています。
「諸支出金」には、「賠償償還及払戻金」「保険料返還金」が含まれています。不用額を生じたのは「雇用保険料及び労災保険料に係る精算返還金が予定を下回ったことにより」となっています。
「収納済額」から「支出済額」を引いた「剰余金」は218億円となります。これは翌年度の歳入に繰り入れられます。


労災保険特別会計」には、それぞれの勘定ごとに損益計算書貸借対照表が添付されています。
さらに「労災勘定」「雇用勘定」には積立金があり、「雇用勘定」には「雇用安定資金」があります。
「労災勘定積立金」は2016年度末で、7兆8616億円。
「雇用勘定積立金」は2016年度末で、6兆2560億円となっています。
「雇用安定資金」は前年度末9403億円、雇用勘定から528億円、前年度剰余金から1180億円を受け入れ、年度末現在額は1兆1112億円となっています。