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2016(平成28)年度特別会計決算を読む その6 年金特別会計

年金特別会計内閣府厚生労働省所管)

さて、年金特別会計です。
年金特別会計には、「基礎年金勘定」「国民年金勘定」「厚生年金勘定」「健康勘定」「子供・子育て勘定」「業務勘定」の6つの勘定があります。

年金–基礎年金勘定

歳入: 算額 収納済額 差額
拠出金等収入 23兆1432億円 23兆1427億円 -4.9億円
うち国民年金勘定より受入 3兆5935億円 3兆5935億円 -2314万円
うち厚生年金勘定より受入 17兆2627億円 17兆2624億円 -2.8億円
うち国家公務員共済組合連合会等拠出金 2兆2819億円 2兆2818億円 -3738万円
運用収入 51億円 49億円 -1.5億円
積立金より受入 9412億円 8585億円 -827億円
雑収入 61億円 44億円 -17億円
歳入合計: 24兆0905億円 24兆0055億円 -849億円

「拠出金等収入」のマイナスは、「国民年金法等の一部を改正する法律(昭和60年法律第34号)」の規定によるもの、と記載されています。「基礎年金の給付に要する費用に当てられた額が予定より多かったため」とのことです。
「運用収入」のマイナスは利子収入の不足、「雑収入」のマイナスは「基礎年金費に係る返納金が少なかったため」「厚生年金勘定からの支払調整金の受入が少なかったため」などの理由が記されています。
全般的に、歳入は予算額より少なくなっています。

歳出 算額 支出済額 不用額
基礎年金給付費 22兆5104億円 21兆6833億円 8271億円
他勘定へ繰入及給付金 1兆4891億円 1兆4891億円 3517円
うち国家公務員共済組合連合会交付金 1910億円 1910億円 1831円
うち国民年金勘定へ繰入 5593億円 5593億円 1624円
うち厚生年金勘定へ繰入 7388億円 7388億円 62円
諸支出金 9.9億円 2.5億円 7.5億円
予備費 900億円 0円 900億円
歳出合計: 24兆0905億円 23兆1726億円 9179億円

「基礎年金給付費」は、「不用額を生じたのは、 1 人当たり給付費が予定を下回ったこと等のため」と説明がされています。
「諸支出金」の不用額は、ほとんどがその中の「支払調整金繰入」の不用額で、これには「厚生年金勘定及び国民年金勘定への支払調整金の繰入れが予定を下回ったことにより」となっています。

「収納済額」から「支出済額」を引いた「剰余金」8329億円は、積立金として積み立てる、とされています。


年金–国民年金勘定

歳入 算額 収納済額 差額
保険収入 3兆9589億円 4兆0660億円 +1070億円
うち保険料収入 1兆3996億円 1兆5069億円 +1074億円
うち一般会計より繰入 2兆0001億円 1兆9997億円 -3.6億円
うち基礎年金勘定より繰入 5593億円 5593億円 -1624円
うち預託金利子収入 1640万円 2332万円 +692万円
積立金より受入 3426億円 650億円 -2776億円
独立行政法人納付金 1575億円 2994億円 +1419億円
雑収入 9.5億円 6.1億円 -3.5億円
前年度剰余金受入 2902万円 2902万円 +919円
歳入合計: 4兆4600億円 4兆4310億円 -290億円

「保険料収入」のプラスは、「1人当たり保険料が予定より多かったこと等のため」となっています。
「一般会計より繰入」はどこからか、ピッタリとした数字がなかったので、いろいろ計算してみたところ、厚生労働省からの「特別障害給付金給付費」の30億円、「基礎年金拠出金等」の11兆2425億円うちの1兆9967億円、となっているようです。差し引き残りの9兆2458億円が、下の「厚生年金勘定」の「一般会計より繰入」の額とぴったり合うので。
独立行政法人納付金」は、「年金積立金管理運用独立行政法人」「独立行政法人福祉医療機構」からの納付金となります。
ホームページはこちら
年金積立金管理運用独立行政法人 (GPIF)」…話題になっていますね。
独立行政法人福祉医療機構 (WAM)」…以前の「特殊法人社会福祉・医療事業団」から2003年に独立行政法人化したもの、だそうです。
「雑収入」のマイナスは、返納金収入、支払調整金受入が予定より少なかったため、とされています。

歳出 算額 支出済額 不用額
特別障害給付金給付費 34億円 31億円 2.9億円
福祉年金給付費 1.7億円 1.2億円 5065万円
国民年金給付費 7131億円 6400億円 731億円
基礎年金勘定へ繰入 3兆5935億円 3兆5935億円 2315万円
業務勘定へ繰入 915億円 915億円 0円
諸支出金 555億円 535億円 20億円
予備費 29億円 0円 29億円
歳出合計: 4兆4600億円 4兆3817億円 783億円

「特別障害給付金給付費」「福祉年金給付費」「国民年金給付費」の不用額は、それぞれ「一人あたりの給付費、受給者数が予定を下回ったため」とされています。

「収納済額」から「支出済額」を引いた「剰余金」493億円は、法律により493億円を積立金に、1638万円を翌年の歳入に繰り入れる、となっています。


年金–厚生年金勘定

歳入: 算額 収納済額 差額
保険収入 45兆0153億円 48兆5918億円 +3兆5765億円
うち保険料収入 28兆7091億円 29兆4754億円 +7663億円
うち一般会計より受入 9兆2471億円 9兆2458億円 -13億円
うち労働保険特別会計労災勘定より受入 84億円 84億円 -837万円
うち基礎年金勘定より受入 7388億円 7388億円 -62円
うち存続厚生年金基金等徴収金 45億円 36億円 -9.0億円
うち解散厚生年金基金等徴収金 1兆5722億円 4兆3844億円 +2兆8122億円
うち実施機関拠出金収入 4兆6391億円 4兆6391億円 -1626円
うち存続組合等納付金 959億円 959億円 -2710円
うち運用収入 2.3億円 4.7億円 +2.5億円
積立金より受入 4189億円 0円 -4189億円
独立行政法人納付金 1兆2545億円 1574億円 -1兆0971億円
雑収入 105億円 64億円 -41億円
前年度剰余金受入 61万円 61万円 +617円
歳入合計: 46兆6992億円 48兆7556億円 +2兆0563億円

「保険料収入」のプラスは、「被保険者が予定より多かったこと等のため」とあります。
「一般会計より繰入」は、上の国民年金勘定のところに書いたように、厚生労働省からの繰入になります。
「解散厚生年金基金等徴収金」が大幅に増額になっています。厚生年金基金は2014年度から新規設立はできなくなっていて、解散時には「最低責任準備金」を国に納付することになっているようです。この「責任準備金相当額徴収額が予定より多かったため」とあり、厚生年金の解散が予算制定時より多くなったためではないか、と考えられます。他年度との比較など、確実なことは、詳しく調べてみないとわかりませんが。
独立行政法人納付金」は、国民年金勘定と同じく「年金積立金管理運用独立行政法人」「独立行政法人福祉医療機構」から納付されています。

歳出: 算額 支出済額 不用額
保険給付費 24兆4125億円 23兆4814億円 9312億円
実施機関保険給付費等交付金 4兆7855億円 4兆7855億円 0円
基礎年金勘定へ繰入 17兆2627億円 17兆2624億円 2.8億円
業務勘定へ繰入 1189億円 1189億円 0円
諸支出金 226億円 114億円 112億円
うち一般会計へ繰入 1273万円 225万円 1048万円
予備費 970億円 0円 970億円
歳出合計: 46兆6992億円 45兆6595億円 1兆0397億円

「保険給付費」の不用額は「 1人当たり給付費が予定を下回ったこと等により」とあります。この中には「日本私立学校振興・共済事業団負担金」「存続厚生年金基金等給付費等負担金」が含まれています。
「実施機関保険給付等交付金」は1項目だけ、「国家公務員共済組合連合会交付金」となっています。
「剰余金」は3兆0960億円、これは積立金として積み立てることとする、とあります。
リンク:「日本私立学校振興・共済事業団」、「国家公務員共済組合連合会(KKR)


年金–健康勘定

歳入: 算額 収納済額 差額
保険収入 8兆9693億円 9兆1708億円 +2015億円
うち保険料収入 8兆9200億円 9兆1604億円 +2015億円
うち一般会計より受入 104億円 104億円 0円
運用収入 1万円 612万円 +611万円
独立行政法人納付金 1.8億円 1.8億円 -754円
借入金 1兆4792億円 1兆4698億円 -95億円
雑収入 318万円 567万円 +249万円
前年度剰余金受入 2145億円 2475億円 +330億円
歳入合計: 10兆6632億円 10兆8883億円 +2251億円

「保険料収入」のプラスは、「被保険者が予定より多かったこと等のため」とあります。
「一般会計より受入」は、厚生労働省からの「健康保険事業借入金諸費」が該当するようです。
独立行政法人納付金」とありますが、中身は「業務勘定より受入」のみとなっています。
「雑収入」の中にも「業務勘定より受入」項目があり、314万円が収納済となっています。

歳出: 算額 支出済額 不用額
保険料等交付金 9兆1476億円 9兆1466億円 9.4億円
業務勘定へ繰入 237億円 237億円 0円
国債整理基金特別会計へ繰入 1兆4896億円 1兆4802億円 95億円
歳出合計: 10兆6632億円 10兆6527億円 105億円

「保険料等交付金」の不用額は、「船員保険料等の交付が予定を下回ったため」とあります。
「業務勘定から受入」がありながら、「業務勘定へ繰入」もしていますね。どういう手続きになっているのか、詳しいことは法律などを調べてみないと分かりません。

「剰余金」は、2356億円となっていて、これは法律の規定により翌年度の歳入に繰り入れる、となっています。


年金–子供・子育て勘定

歳入: 算額 収納済額 差額
拠出金収入 3351億円 3356億円 +5.0億円
他会計より受入
 一般会計より受入 1兆2521億円 1兆2521億円 0円
 うち児童手当財源受入 1兆1614億円 1兆1614億円 0円
 うち特例給付等財源受入 461億円 461億円 0円
 うち地域子供・子育て事業財源受入 427億円 427億円 0円
 うち業務取扱費財源受入 19億円 19億円 0円
積立金より受入 3.4億円 3.4億円 0円
雑収入 24億円 71億円 +48億円
前年度剰余金受入 245億円 399億円 +155億円
歳入合計: 1兆6143億円 1兆6351億円 +207億円

「拠出金収入」は「事業主拠出金収入」の1項目だけで、プラスになった理由は「被用者が予定より多かったこと等のため」とあります。
「一般会計よりの受入」は、全て「内閣府–子ども・子育て本部」からのものになります。「児童手当 繰入」が1兆1614億円、「地域子供・子育て支援事業繰入」が427億円、「年金特別会計へ繰入」が480億円。これは「特例給付等財源受入」と「業務取扱費財源受入」に分けられています。
「雑収入」のプラスは、「子ども・子育て支援交付金に係る返納金が予定より多かったこと等のため」とあります。

歳出: 算額 前年度繰越 支出済額 翌年度繰越 不用額
児童手当等交付金 1兆4155億円 1兆3699億円 456億円
地域子ども・子育て支援及仕事・子育て両立支援事業費 1936億円 2.5億円 1754億円 13億円 172億円
業務取扱費 22億円 20億円 1.8億円
うち業務勘定へ繰入 16億円 16億円 0円
諸支出金 4500万円 4000万円 500万円
予備費 30億円 0円 30億円
歳出合計: 1兆6143億円 2.5億円 1兆5474億円 13億円 660億円

「児童手当等交付金」の不用額は、「児童手当の支給対象児童が予定を下回ったこと等により」とあります。この項目の中では、「児童手当交付金」から「特例給付等交付金」へ60億円が流用され、「特例給付等交付金」は予算額462億円より多い522億円が支出されています。
「子ども・子育て支援及仕事・子育て支援事業費」の不用額は、「病児保育事業及び延長保育事業が予定を下回ったこと等により」とあります。
「業務取扱費」には職員基本給などの人件費が含まれています。

「剰余金」は877億円、翌年度への繰越に13億円、積立金に180億円、残額684億円を翌年度の歳入に繰り入れること、となっています。

年金–業務勘定

歳入: 算額 収納済額 差額
一般会計より受入 1049億円 1049億円 0円
他勘定より受入 2357億円 2357億円 0円
うち国民年金勘定より受入 915億円 915億円 0円
うち厚生年金勘定より受入 1189億円 1189億円 0円
うち健康勘定より受入 237億円 237億円 0円
うち子ども・子育て支援勘定より受入 16億円 16億円 0円
特別保健福祉業資金より受入 1004万円 60万円 -944万円
独立行政法人納付金 1.5億円 2.0億円 +4713万円
雑収入 86億円 398億円 +312億円
前年度剰余金受入 290億円 463億円 +173億円
歳入合計: 3784億円 4269億円 +485億円

「一般会計より受入」は、厚生労働省からの「業務取扱費」が該当する金額になります。
独立行政法人納付金」は「独立行政法人福祉医療機構」からの納付金になります。
「雑収入」が大幅に増えているのは、予算計上されていなかった「日本年金機構納付金(226億円)」「日本年金機構出資回収金(8851万円)」があったためのようです。

歳出: 算額 前年度繰越 支出済額 翌年度繰越 不用額
業務取扱費 401億円 384億円 16億円
社会保障オンラインシステム費 672億円 3.6億円 624億円 0円 52億円
日本年金機構運営費 2709億円 2709億円 0円
健康勘定へ繰入 1.9億円 1.9億円 903円
一般会計へ繰入 1004万円 60万円 944万円
予備費 1200万円 0円 1200万円
歳出合計: 3784億円 3.6億円 3719億円 0円 68億円

「業務取扱費」の中には人件費、庁費が含まれています。他には「一般会計へ繰入(1219万円)」が含まれていますが、よくよく調べてみると、コード番号に「会計間重複」と示されているので、一般会計には項目として上がっていないようです。

ちなみに一般会計を見ると、厚生労働省の歳入の中に「厚生年金勘定」からの225万円と「業務勘定」からの60万円を足し合わせた285万円が計上されています。
ホームページ:「日本年金機構

「剰余金」は550億円。「特別保健福祉事業以外の事業」に係るものについての剰余金550億円は、国民年金勘定の積立金に110億円、厚生年金勘定の積立金に120億円、健康勘定の翌年度歳入への繰入に13億円、業務勘定の翌年度歳入への繰入に306億円、となっています。
「特別保健福祉事業に係る者」についての剰余金1656万円については、特別保健福祉事業資金に組み入れる、としています。

以上が年金特別会計の各勘定の決算の明細の主なもの、ということになります。この後には基礎年金勘定、国民年金勘定、厚生年金勘定、健康勘定、業務勘定の損益計算書貸借対照表が添付されています。「子ども・子育て支援勘定」にはなぜかありません。

さらに、積立金の明細が添付されています。年度末現在地を見ておきます。
基礎年金勘定の積立金は、2兆3596億円。
国民年金勘定の積立金は、7兆2583億円。
厚生年金勘定の積立金は、107兆2240億円。
子ども・子育て支援勘定の積立金は、411億円。

その他に、業務勘定には「特別保健福祉事業資金増減実績表」があります。前年度剰余金受入と運用益を合わせた金額(60万円)は、全額歳入に繰り入れられて、年度末現在額は0円です。