乱反射の光跡 in hatenablog

なみへいのブログです。hatenablogヴァージョン。

F1-2006-08 イギリス


 F1第8戦、イギリスグランプリ。
 この時期のイギリスとしては暑かったそうですが、シルバーストーン・サーキットは気温26度、路面温度40度のドライ・コンディション。サッカーのW杯の影響でF1のスケジュールにもいろいろ変動があったようで。


 それはともかく。
 テレビの放送で解説がありましたが、このシルバーストーン・サーキットでのF1は、ポール・トゥ・ウィンで買ったドライバーがふたりしかいないというサーキットだそうですが、そんなコースで見事な完全勝利(と言っていいでしょう)を遂げたフェルナンド・アロンソ


 なんと言うか、スペインで見せたような「熱い」「鬼のような」走りというのでもなく、なにか淡々と周回を重ね、やるべきことをやり、走って止まって曲がって、それだけで後続をぐんぐんと引き離して勝ってしまった感じ。
 まあこの「やるべきことをやって」「周回を重ねる」ことこそが難しいことだと思うので、それをやってしまっているアロンソルノーチームが「凄い」わけで、だから堂々のトップチェッカーも当たり前だ、と言われればそうなのですが。
 やはり解説にあったように、アロンソルノーチームはその辺で他のチームよりいちだん上回っている、そんな印象がありました。


 安定して力のあるマシンを決勝レースに送り込む力。そのマシンのポテンシャルを引き出す力。そしてコーナーを最良のコース取りで曲がり、ストレートで最高のスピードを出し、ストレート・エンドでそのマシンをスピードダウンさせ、コースを曲がる。ピットレーンでしっかり止まり、ピット作業を確実に手早くやり、着実にピットレーンから出て行く。
 そうしたひとつひとつの「作業」が高い技術力や集中力を必要とする作業であり、それを決勝レース1時間半に亙って持続することは、とんでもなく大変なことでしょう。それを、アロンソルノーチームはレースの中で「淡々と」こなしてしまっているわけです。例えば他のチームとドライバーが場面々々で「ここぞ」という時に意識的に集中して「作業」を進める、そんなふうだとしたら、アロンソルノーチームの場合は「意識的ではなく」他のチームと同じ集中力を持っていて、その集中力のポテンシャルをレースの間中持続できる、なんと言うか「チームの基礎体力」を持っている、そんな感じでしょうか。
 まあ、ぼんやり見ていた僕の、ぼんやりした感想ですが。
 他のチームとドライバーが自分を追い込むようにしてマシンやドライビングのポテンシャルを「意識的に」上げる努力をしているにも関わらず、同じようなポテンシャルをすでに「基礎的なポテンシャル」として持っていて、あとはそれを発揮するだけでトップを快走できてしまうような、そんな「基礎体力」を、ルノーチームは作り上げてしまったのかもしれません。
 だとしたら、このアロンソルノーを押さえるには、他のチームも同等かそれ以上の「基礎体力」を持たなければならないのかもしれません。


 こうした「ポテンシャル」は、黄金時代のミハイル・シューマッハが持っていたものと似たようなものなのかもしれません。当時のミハイルも、「やることをやって周回を重ねるだけで」勝ってしまう、そんなポテンシャルを持っていたような気がします。


 そんなアロンソに必死で追いすがるミハイルとキミ・ライコネン
 1周目でスコット・スピードラルフ・シューマッハ接触し、さらにラルフがマーク・ウェバーとクラッシュしてしまい、セーフティーカーが導入され、2周ばかりスロー走行が続いたあとのこと。
 セーフティーカーが引き上げた再スタートで、アロンソは後ろのマシンを引き離したかったに違いないでしょうが、そうはさせじと食い下がったのがミハイルとライコネン。しかしライコネンのマシンはアロンソに食いつくまでのポテンシャルを発揮できず、それに押さえられる形となって徐々に引き離されていったミハイル。ライコネンの2回目のピット作業のスキに猛然とプッシュしてライコネンの前に立ったミハイルの「必死の追走」も、アロンソの背中に襲いかかるまでは至らず。
 決して走りは悪くないこのふたりのマシンがなかなか追いつけない、そんなアロンソがやはり「1枚上」に思えてしまいます。


 今回はマッサも頑張りました。途中ピット作業でフィジケラに前を譲ったりした場面もありましたが、前半はトップグループの隊列に加わってのレース。「皇帝」のチームパートナーというのも大変そうですが(笑)、徐々に2台でルノーマシンを追っていけるようになってきた気がします。
 そして2台揃っての完走を果たしたスーパーアグリF1。4月のオーストラリア以来です。


 一方大変だったのがジェンソン・バトン
 予選では第1ピリオドの最中にマシンの車重計測に呼ばれてしまい、その後でピットに戻れる時間を失ってしまい、結局その前にセーブして走ったタイムが予選の公式タイムになってしまったそうで。
「へえ、そんなこともあるんだ」と僕なんぞは吃驚しましたが、これはどうなんでしょう?
 時間を区切られた予選のピリオド、その最中に車重計測を行うというのは、普通のこととして行われているのでしょうか。それともバトンだけが特別に呼ばれたのでしょうか。それにしても、決勝レースのポジションに直接影響する公式予選のトライアルが、そういう形でチャンスを奪われるというのは、なんとなく釈然としませんが。
 というわけで予選タイムがなかったトゥルーリスーパーアグリF1チームの2台の前・19位というポジションからスタートとなったバトン。マシンスピードに差があるなら抜きやすい、広いコースもあってか、決勝開始早々着実に順位を上げていたのですが。
 10周目でマシン後部から炎を上げ、漏れたオイルがタイヤに付いてスリップし、コースアウトしてマシンを止めてしまう事態になってしまいました。
 どうやら問題はエンジンではなく、どこかから漏れたオイルが燃え上がったためらしいのですが、母国のファンの前で早々にマシンを降りてしまう羽目になってしまったのは、残念無念。このままいけばポイント圏内まで戻れるかも、という走りだっただけに、とても悔しい結果になってしまいました。


 そして、我が(笑)ルーベンス・バリチェロ
 今回、上空のヘリからのスタートシーンがリプレイで出ていましたが、やっぱりスタートはどうも遅いようです(笑)。その辺の原因がどこにあるのか分かりませんが。マシンの問題なのか、ルーベンスの正確の問題なのか、双方の相性の問題なのか。
 6番手と今回も上々のグリッドをゲットしたルーベンスでしたが、後ろからスタートダッシュを決めたハイドフェルドに抜かれ、さらにセーフティーカー解除直後にモントーヤにパスされて8位へ後退。
 その後も挙動不審のマシン(笑)を押さえつけながらの走行が最後まで続いたようで、トップのアロンソに続いて(周回遅れで)フィニッシュすれば結果は10位。


 バトンのマシンといい、ルーベンスのマシンといい、最近安定性を増したかに思えたのですが、まだまだ「安定的に不安定」(笑)な状態を抜け出せないのかもしれません。簡単に「抜け出す」と言っても、おそらくこの不安定要因はさまざまなパラメータが絡み合ったもので、その絡み合いをほぐすのは容易ではないかも知れない、などと思ったりもします。なんか、細かいところが「ちょっとずつ」悪くて、ひとつひとつはあまり大きな影響がないと思われるものなんだけど、これがいくつか重なったり、絡み合ったりして結果的に「全然うまくいかない」状態になっている、というような感じではないか、と想像してますが(笑)。
 そうだとしたら、ひとつずつ小さな問題をクリアしていって、それが徐々に全体のポテンシャルアップに繋がるような、細かな作業を積み上げていくしかないのでしょう。そうしてクリアしていくことが、チーム全体の「基礎体力」の強化、ということじゃないでしょうか。
 予選でのポテンシャルは確かに上がってきていると思うのですが。それが決勝レースに繋がっていくような、そんな「基礎体力」作りが、今年のHondaチームの課題のような気がします。
 少し未来に、現在の勢力図を掻き回してくれるようなチームになってくれることを願いつつ。
 そろそろ、表彰台のルーベンスが見たくなってきたし(笑)。