乱反射の光跡 in hatenablog

なみへいのブログです。hatenablogヴァージョン。

東浩紀編「思想地図β2」

思想地図β vol.2 震災以後

思想地図β vol.2 震災以後

一通り読み終える。
写真と詩、ルポルタージュ、インタビュー、座談会、シンポジウム、都市デザインの提言を含めた多岐にわたる内容。で、震災から数ヶ月に渡る各々の経験を踏まえて、各執筆者や出席者、参加者が振り返り、今を見つめ、未来を模索する「言葉」が、そこに散りばめられている。
一冊の本の中に納められたのは、「過去から今」にいたる複数の視点と複数の射程(地理的・時間的)から投げかけられる「言葉」あるいは「言葉にしようとする意志」たちである。それぞれの「言葉」は各所で重なり、すれ違い、あるいは断層を生み、ねじれた何かを表面化させようとする。
きっとそれは、本書では(本書1冊では)実現していないように思える。ここにある言葉は震災後の思想・技術・言説を探す「言葉を求める言葉」であり、しかしそれこそが本書の成果でもある。ここにあるのは「語り尽くせない何かを目の前にして、語り尽くせない事を自覚しながら語り尽くしてみたい」という、絶望と欲望の断層にある「言葉」なのではないだろうか。本書で綴られる「言葉」は、もしかしたら未来には残らない言葉の数々かもしれない。しかし、ここにある言葉は、「未来に残す言葉」を求める意志に支えられた「言葉」の数々ではないのか。猪瀬氏の「家長」として語る事の意味と、和合氏の「つねに1分だけ遅れて語られる」という示唆は興味深い。僕らはリアルタイムのふりをしながら、つねに遅れて「言葉」を発してしまう。その時間差を和合氏は「1分」と喩えた。「現実」と「言説」の時間差を可視化するこの言葉は、重い。