乱反射の光跡 in hatenablog

なみへいのブログです。hatenablogヴァージョン。

桜庭一樹「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」


砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない (富士見ミステリー文庫)

砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない (富士見ミステリー文庫)


いやいや、読んでいて途中で主人公につられて泣きそうになってしまいました。おっさんのくせに(笑)。えーと、洗濯機のシーンね。


1ヶ月ほど前に読み終えて、「ちょっと感動したぞ」という感想を書こうと思っていたのですが、文章をひねっているうちに最近の子供をめぐるニュースが次々と報道されてはこの作品の感想とリンクしてしまい、本の感想やらニュースの感想やらが頭の中でグルグル回ってしまい、何回書いても本の感想ではないような文章にしかならず、「こりゃあ書けないぞ」などと思ったりもしたのですが(笑)。


それはともかくとして(笑)。


相手の行動に悪意を読み取ってしまい、とても気に入らなかった行動が実は、本人にとってはそれなりに理由があり、必要があり、悪意とは全く違った気持ちから発していたものだったという状況は、自分でも現実にやっちゃったこともあったりしたので、だからなぎさの心情にもらい泣きしそうになったりしたのですが。


訳がわからん、という人は、とりあえず読んでみてください。


「身もふたもない話」というのが読み終えた直後の感想だったのですが、それを「身もふたもなく」書くことで安易なハッピーエンド(=「救い」とか「癒し」とか?)を拒否しつつ、しかしそこから、物語の奥底に沈んだ、ほのかな、ほのかな「希望」を掘り起こしてくるような、そんな印象を抱いたりもしてます。
それはこの物語が、「リアリティのあるフィクション」ではなく、「フィクションでもなく、リアリティでもない、『リアルなもの』」に近いところにあるからかも知れません。物語で得られる「救い」や「癒し」は現実にはなく、現実にあるのは「救い」や「癒し」を目的としたフィクションであったり、「幻想の現実」であったりする訳で。


……てなことを考え始めるときりがなく、おかげでこの感想も迷走する羽目になってしまったのですが(笑)。
そう、「リアリティ」と「リアル」の間で揺れながら生きること、それこそがなぎさの「実弾」と藻屑の「砂糖菓子の弾丸」に込められているものだったりして。