乱反射の光跡 in hatenablog

なみへいのブログです。hatenablogヴァージョン。

F1-2006-15 イタリア


東京ではうだるような暑さになった日曜日、ヨーロッパにはもう秋の気配の訪れでしょうか。イタリア・モンツァ・サーキットの気温は28度、路面温度は41度。


ミハイル・シューマッハの引退は、僕的には「やっぱりかあ」といったところ。続投ならレース前に発表してもおかしくありませんものね。それを「レース後に」と言った時点で、こういう決断になるであろうことは予想できましたので。
まるで「シナリオ通り」と思わせるようなピットストップでの逆転劇を見せてくれたり、かと思えば若いドライバーに負けない集中力や気迫、無謀にも見える仕掛けをやって見せたり(笑)、あくまでもチャンピオンシップを狙う執念深さを見せてくれたりと、ミハイルの一挙一投足はまさに「F1を走るために生まれた男」という形容が見事に当てはまる、そんな選手なのではないかと、僕には思えます。
もちろん37歳という年齢は「トップドライバー」として君臨するには厳しい年齢でしょうし、今年あたりに時折見せる「挙動不審」が何に起因するのか、誰よりも知っているのはミハイル本人でしょうし。
「セナに追いつき、セナを追い越す」ことを目標に走ってきた頃、ミハイルは機械のようなコーナーリングを見せながら、まるで「結果と数字が全て」のような走りを見せていました。それがセナの記録を次々と塗り替えるようになってから、彼のレースに臨む態度が少しずつ変わってきたように感じます。
インタビューでスタッフの素晴らしさを讚え、表彰台で子供のように喜ぶミハイルの姿は、何か不思議な感じがしたものです。しかし僕にはこう見えます。「セナという目標を超えて、F1レース自体に参加し、そこで走ることがいかにファンタスティックな体験であるかを、自分自身で表現」し始めたのではないかと。これは僕の憶測でしかありませんが。


そんなミハイルが、F1ドライバーとしての最後の年を、どんなふうに締めくくってくれるのか、見つめていたいと思います。「レーサーの終わり方」として、「皇帝」にふさわしい終わり方、というのは、どのようなものでしょうか?
……あと、やっぱり引退の会見は、ティフォシの前でやりたかったのかな、などとも思いつつ。


……とは言え、コースに出れば誰かに道を譲る気など露ほどにもないのがF1ドライバー。ミハイルとてそれは同じでしょう。


スタートダッシュでねじ込んできたハイドフェルドを抑え込み、2番手を確保するとその後はトップのキミ・ライコネンの後ろにぴたりと付け、ライコネンのピットインを見てプッシュ、2周後の自らのピットインでライコネンの前に出るという技を見せ、見事にトップを奪取。ティフォシ達の応援の前で「有終の美」を飾り、チャンピオンシップでもフェルナンド・アロンソにあと2ポイント、というところまで迫りました。残り3戦ががぜん楽しみになってきます。


そのミハイルを予選で2/1000秒上回り、僅差でポールポジションを奪ったキミ・ライコネン。スタートダッシュから序盤をしのぎ、ミハイルに僅かに先行しながらのトップ・キープでしたが、ピットストップでミハイルにしてやられ、その後は力走するミハイルから少しずつ離されながらも2位をキープしてフィニッシュ。
 次戦に向けてのエンジン温存の戦略があったのかどうか。……まさかティフォシに思わず遠慮して、なんてことはないでしょうが(笑)。


そして10番手からのスタートとなったディフェンディング・チャンピオン、フェルナンド・アロンソルノー。さすがにレースとなれば安定度と速さは、中段グループの中では抜群。いちはやく中段グループを抜け出し、着実に順位を上げていくあたりはさすが。
しかし2回目のピットイン(ロナルド・クビサとサイドバイサイドでのピットアウト!)の直後、3位走行中にルノーマシンとしては珍しい、突然のエンジンブロー。マシンをコースから出してあえなくリタイアとなってしまいました。
かろうじてフィジケラが4位入賞を勝ち取りはしましたが、コンストラクターズ・ランキングではフェラーリに逆転を許してしまうなど、乱調気味のルノーチーム。ここへ来てずぶずぶと沈んでしまう訳には行かず。特にアロンソにとっては、直接対決でミハイルとのチャンピオン争いを制する最後のチャンス。ラストランを決めに来るミハイルを打ち破ってこそ、と思っていることでしょう。
こちらもまた、残りのレースをどう戦うのか、興味が出てきました。


 一方、対照的にマシンを決めて上位を窺う態勢を固めたのは、BMWザウバーチーム。特にヴィルヌーヴに替わって今シーズン途中参加でありながら、フェリペ・マッサフェラーリを抑え、アロンソとサイドバイサイド(ピットレーンで、でしたけど)を演じ、終わってみれば参戦3戦目にして何と3位表彰台。ペナルティを受けて順位を下げてしまったハイドフェルド共々、ダブル入賞は快挙でした。


 そして、Hondaチーム。
 初優勝の経験がやはり大きいのでしょうか、これまでどこかしらで感じた「不安定さ」というものが、チーム、マシン、ドライバーの全員に渡って、目に見えて払拭されている感じがします。
 スタート直後ではアロンソに煽られたりしていたジェンソン・バトンもその後は堅実な走りをつづけ、目立たないながらも(ということは、大きなトラブル・アクシデントもなかったということで)着実に周回を重ねて、5位フィニッシュ。


 そして我が(笑)ルーベンス・バリチェロも堅調な走りの上にワン・ストップ作戦が当たり、バトンの後方10秒で6位フィニッシュ。予選で最終ピリオドまで残りながら、ワン・ストップを敢行できるだけの燃料ってどれほどだか分かりませんが、スタート時はよほど重かったに違いありません(笑)。
 それでも前回、今回と見てきて、予選順位と決勝レースでの順位のバラつきが減ってきたのは確かでしょう。それだけチーム、マシンに安定性が出てきた、ということなのかもしれません。なんか、これまで結果が出なかったことがチーム、マシンに悪影響を与えてきたところ、初優勝を成し遂げて一気にチームもマシンも安定するようになった、という感じがしたりして。
 そうした面でも、Hondaチームは着実にステップアップを重ねてきている、ということなのでしょう。初優勝の経験はやはり大きなものがあったようです。これまで五里霧中だったものが、一気に視界が開けてきて、チームに足りないもの、スタッフ・ドライバーに足りないものがいくらかはっきりと見えるようになってきた、という感じでしょうか。
 あと、今シーズンは残り3戦。今シーズンをどのように締めくくり、来シーズンに繋がるような「可能性」をどこまで見せてくれるか、こちらも最後まで注目したいと思います。
 今年は無理かもしれないけれど、来年はルーベンスの表彰台が、見られるかな?