乱反射の光跡 in hatenablog

なみへいのブログです。hatenablogヴァージョン。

F1-2006-09 カナダ


 カナダ、モントリオールジル・ヴィルヌーヴ・サーキット
 自分の名字、自分の父親の名前が冠せられたサーキットを走る時、ジャック・ヴィルヌーヴの胸中には何が去来しているのでしょうか? ……そんなことを毎年考えるのは、僕だけでしょうか?(笑)


 それはさておき、モントリオールは気温29度、路面温度48度のドライコンディション。路面温度は今シーズンで最高。この気象条件に加えて、マシンに厳しいサーキットだそうで。
 昨年は荒れに荒れて完走11台、一昨年は完走10台という、過酷なサーキット。昨年はフェルナンド・アロンソジャンカルロ・フィジケラ共々リタイア。一昨年はヤルノ・トゥルーリアロンソ共々リタイアと、ルノーにとっては「魔のサーキット」。ちなみに2004年の表彰台はミハイル・シューマッハルーベンス・バリチェロジェンソン・バトン。ついでに(笑)2005年の表彰台はキミ・ライコネン、ミハイル、バリチェロ。……Hondaとバリチェロにとっては、チャレンジする価値のあるコース、ではありませんか!? そうでしょ?(笑)


 などと、甘い期待は裏切られるもの(笑)。
 今年もまた、大荒れの展開になった決勝レース。オープニングラップでミッドランドの2台、モンテイロアルバース接触モンテイロはレースに復帰するものの、アルバースはこのままリタイア。2周目でロズベルグモントーヤ接触ロズベルグはそのままウォールにぶつかってクラッシュ。これでセイフティカー導入となり、波乱の幕が開きました。
 さらにセイフティカーが引っ込んだ4周目にはスーパーアグリチームのモンタニーがエンジンを炎上させてリタイア。12周目には順位を落としていたバリチェロがマシンをガレージに入れてリタイア。13周目には接触のあとレースに戻っていたモントーヤが、どうやらウォールにマシンをぶつけたらしく、ホームストレートでスローダウンしてリタイア。
 そして最終盤、59周目には地元代表ヴィルヌーヴが、オンボードでの映像を放映中にウォールに激突! これで再びのセイフティカー導入で、コース上には同一周回、周回遅れが混ざり合っての数珠繋ぎ。残り7周でレースが再スタートした時には、全員でひとかたまりになって周回遅れを抜いたり、同一周回で争ったり、パッと見には何が何やら(笑)。
 そして最終周では佐藤琢磨がウォールにクラッシュ。完走扱いとはなりましたが、ゴールチェッカーまでは届かず、無念のレースになりました。


 決勝レースのツートップ、いやいや(笑)、フロントローアロンソフィジケラルノー勢。バトンは8位、バリチェロは9位からのスタート。ミハイルまでもが3列目に沈むという、嵐の前のような決勝グリッド。
 レーススタートの瞬間、何となくバラバラとスタートした感じがしたので「ありゃ」とか思ったのですが、どうもフィジケラのジャンプスタート(フライング)だったようで。
 フィジケラ自身にも自覚症状があったのか、その後の加速が伸びずにライコネンに2番手を奪われる始末に。その後にフィジケラのフライングが協議の対象となり、フィジケラはピットスルーペナルティを受けることになり、予選のツートップ、いやいや(笑)、1−2態勢が……。


 それにしても、ここのところ盤石の走りとも言える快調さを維持しているフェルナンド・アロンソ。マシンが安定して速いためドライビングに余裕が生まれ、それがマシンに負担をかけない走りに繋がり、それがまたマシンの安定性をより引き出すような、そんな「歯車がきっちり噛み合った」レース展開を可能にしている、そんな印象を持ってしまいます。
 今回も「やるべきことをきっちりやって」勝った、という印象のアロンソ。もちろんマシンもドライバーも限界ギリギリのところで走っているわけですが、その高いパフォーマンスをきっちり保っているからこそ、その走りに「余裕」を感じるのかもしれません。


「無理をしないでトップを走る」アロンソに対し、「無理を承知でトップを狙う」のがミハイル・シューマッハ。いえ、そう見えるだけですが。
 オープニングラップで7位にまで順位を落としたミハイルですが、前を走るモントーヤロズベルグのクラッシュ、そしてフィジケラのピットスルーペナルティで4位に。しかしそこからが大変。快調にトップを走行するアロンソとそれを追うライコネン、その2台に置いていかれるように引き離される3位のトゥルーリ。そのトゥルーリのマシンに前を阻まれたままで、どんどんアロンソライコネンに引き離されるミハイル。
 そのトゥルーリを22周目でパスしたあとは、トゥルーリをを後ろに置き去りにして怒濤の追い上げ。ライコネンがピット作業のアクシデントでアロンソから遅れる中、気がつけばミハイルはライコネンのすぐ後ろ。
 その後のセイフティカーによるダンゴ状態(笑)を抜け、残り3周でライコネンを見事にパス。最後にはアロンソの背後に迫る勢いを見せつけたあたりは、さすが。
 フェラーリのマシン、かなりパフォーマンスを上げてきているというか、調子を戻してきている感じがあります。終盤の追い上げを見ると、ルノーマシンに拮抗するところまできているのではないでしょうか。……いや、アロンソはまだ余裕がありそうだけど(笑)。
 アロンソのパフォーマンスの高さがどこまで続くのか、と同時に、いよいよポテンシャルを高めてきたミハイルがどうアロンソに迫っていくのか、シーズン後半の楽しみのひとつになりそうです。


 しかし、キミ・ライコネン
 1回目のピットインでは右リアタイヤの装着に手間取り、2回目のピットインではエンジンストールと、ピット作業で泣かされ続けました。コース上では序盤アロンソサイド・バイ・サイドを演じるほどのパフォーマンスを見せてくれたのに。
 マシン自体のポテンシャルも高そうだし、ドライバーのパフォーマンスも高いのに、肝腎なところでルノーに先を行かれてしまうマクラーレン。何か、マシンとドライバーのポテンシャルの高さを、チーム全体で受け止め切れていない感じがします。モントーヤだって最後まで走り切ればいいところでフィニッシュしているのだし。何となく「噛み合う、噛み合わない」みたいな話が今年は多いような気がしますが、ここでもまた、マシンのポテンシャルとドライバーのパフォーマンス、そしてチーム全体の総合力にどこか「噛み合わないもの」を感じてしまいます。
 アロンソとミハイルのガチンコバトルを横から浚ってしまうとしたら、やはりライコネンが最有力候補なのだと思いますが。どうもそこに「行ける」という予感めいたものを感じないのが、今年のマクラーレンチームの課題でしょうか。


 そして、どうにもこうにもマシンポテンシャルが上がってこないのが、Hondaチームの2台。
 8位スタートのバトンは順位をキープしながらも、最終盤でクルサードレッドブルにコース上でパスされてしまい、虎の子のポイントを取り逃してしまいました。
 決勝後のコメントではふたりともマシンの取り扱いに苦労しながらのレース展開だったようで、なかなかスムーズにポテンシャルを上げてくれないマシンに苛立っている感じが伝わってきます。他のマシンとバトルをするより、マシンとの格闘に力を割かれている感じ。これは、競馬のG1レースで「ひとりロデオ」をやってしまった感じでしょうか(笑)。……どんな感じやねん(笑)。


 そして我が(笑)ルーベンス・バリチェロは、9番手からスタートしたもののオープニングラップで大きく順位を落とし、一時は11位あたりを走行していたと思いきや、いきなりテレビに映ったのはマシンをガレージに納めるシーン。わずか12周のレースは、あっけなく終わってしまいました。
 今回何ひとついいところがなかったHondaチーム。パフォーマンスを徐々に上げてきて、前方に光が見えたかと思いきや、その光を再び見失ったような、そんな「Hondaの迷走」を見ているような気分でした。
 まずは、マシンのポテンシャル。
 潜在的なポテンシャルは高いと思うのですが、それが決勝レースに結びつかない。その繰り返しとトラブルシューティングが、何かマシンポテンシャルをおかしくしてしまう方向へ向かっているような、そんな想像をしてしまったり。マシンのエンジニアが、ドライバーが、チームクルーが問題の解決に全力で当たっているのでしょうが、それぞれの解決策が全体としてのマシンとドライバーのバランス、あるいは「噛み合わせ」を悪くしてしまっているのではないか、などと想像してしまったりします。


 F1のレースレギュレーションを含む「環境」みたいなものが、「パワー」や「パフォーマンス」から「バランス」「マッチング」のようなもの重視に変貌してきたのかもしれません。例えば「速い」だけとってみればルノーよりマクラーレンフェラーリの方が「速い」のかも知れません。「安定性」は……、やはりルノーが一番かな。さらにそのふたつを組み合わせた時のマシン・パフォーマンス、さらにドライバーのパフォーマンスを合わせた「マシン=ドライバーズ・ポテンシャル」、さらにチーム全体の総合力を合わせた「チームとしてのポテンシャル」。
 そうした「マッチング」の微妙な違いが、チーム力としての大きな違いとしてレース結果に出ている、そんな感触を感じたりもしています。
 その「微妙な感じ」を、どうレースのパフォーマンスとして結実させていくのか、各チームはそんな難しい課題を背負いながら闘っている印象もあります。……そんな印象を持つのは僕だけかも知れませんが。
 その「微妙な感じ」にいちはやく気づいたのが、ルノーチームなのかもしれません。それが、ルノーチームの「盤石な強さ」を作り上げているような気がするのですが。
 ……というのは、僕の妄想ですか?(笑)